2017年10月28日土曜日

カープCS敗退と「右腕コレクション」

『清宮幸太郎狂躁曲』とでもいおうか、高校通算本塁打111本を記録した破格のスラッガーが台風の目となって日本を縦断する騒動となった2017年ドラフト会議。
結局、清宮はロッテ、ヤクルト、日ハム、巨人、楽天、阪神、ソフトバンクの7チームから1位指名を受け、抽選の結果日ハムが選択権を獲得した。

シーズンオフに大谷翔平選手のポスティングでのメジャーリーグ転身を容認している同チームに、同じくメジャー志向の清宮が入れ替わるように入団することになったのも縁といえば縁なのだろう。

この“清宮颱風”からいち早く退避して、この夏の甲子園で6本のホームランを放ち大会最多本塁打記録を塗り替えた地元の星、中村奨成捕手の1位指名を公言していたカープ。もしや1本釣りに成功かとも思われたが、中日も1位指名したことで2チームの競合になった。
しかしカープは、シーズンの戦いぶりそのままに中日を一蹴して緒方監督が選択権を引き当てた。

先のCSで横浜の下克上をゆるしてしまい、リーグ連覇の熱気に水を差し日本シリーズ制覇の期待を裏切ってしまったばかりのカープが、ドラフト会議という余興で一発芸を見せてくれたことでファンは溜飲を1ミリほどは下げることができた。

ここで、あらためてことしのドラフト会議でカープが指名した選手を確認してみたい。

 1位 中村奨成 捕 手 右右 広陵高
 2位 山口 翔 投 手 右右 熊本工高
 3位 ウムナ ブラッド 誠 投 手 右右 日本文理大
 4位 永井敦士 外野手 右右 二松学舎大付高
 5位 遠藤淳志 投 手 右右 霞ヶ浦高
 6位 平岡敬人 投 手 右右 中部学院大

育成枠

 1位 岡林飛翔 投 手 右右 菰野高
 2位 藤井黎来 投 手 右右 大曲工高
 3位 佐々木健 投 手 右右 小笠高

ご覧のように捕手の中村と4位で指名した永井外野手以外は、すべて投手だった。

数だけみれば是が非でも将来の主軸投手がほしい、という戦略のあらわれのようにとれるが、どちらかといえば内野も外野もバブリーになってきたカープ、強いて野手を補強することもないだろうから投手にいきますか…、的なスタンスでの補強でこのような構成になったとみるのが妥当だろう。

その方向性は納得するてしても、さてさて、その内容についてはどうだったのだろうか?

もちろん将来、この投手たちの中から絶対のエースがでてくるかもしれない、盤石の抑えが誕生するかもしれない。
しかし、「左投手がひとりもいなかった」という結果から、今回のドラフトを個人的には評価できない。
というより「なに考えとるんじゃ!」と、不満がさきにたってしまった。

6位指名で打ち止めになった時点で、右投手しかいなかったことに落胆し、育成枠でさらに右、右、右と指名されるごとに呆れ顔がズムスタのように真っ赤に染まって怒りに変わっていくのがわかった。
なにが悲しくて意地になっているのか、もしかしてファンに当てつけでこんな指名をしているのか、正直、球団の正気を疑った。

全体的に有力左腕不足だったのはあったとしても、CSで不覚をとった横浜が投手を5人指名したうち、ドラ1の東克樹投手をふくめて2人が左腕というバランスのよさだったのを見るにつけ、「ドラフトでも采配負けかよ」と愚痴のひとつもいいたくなった。

もう左投手はお腹いっぱい、それならわかる。
いくらでも育ってきている、というのなら納得する。

しかし、いまカープにこれといった左腕はいないのが実情だ。

今回のCSファイナルで敗退した横浜戦をふりかえってみれば、それは顕著にあらわれていた。
横浜のラミレス監督が、先手先手で左右の投手を投入して局面を打開していく華麗な采配を指をくわえて見ながら、カープはシーズン同様の順番で右投手を繋いでいく凡庸な戦略を取らざるをえなかった。

ファンには振り返りたくもないだろうが、ここで両チームのCS全試合での投手起用をみてみたい。

 第1試合 広島 薮田
      横浜 石田

 第2試合 広島 野村-九里-今村-中田-ブレイシア
      横浜 濱口-パットン-山﨑

 第3試合 広島 ジョンソン-今村-一岡-ジャクソン-中﨑
      横浜 井納-三上-砂田-須田-エスコバー-パットン-山﨑

 第4試合 広島 薮田-九里-今村-一岡-ジャクソン-中﨑
      横浜 ウィーランド-砂田-三上-エスコバー-今永-山﨑

 第5試合 広島 野村-大瀬良-中田-今村-一岡-ジャクソン-中﨑
      横浜 石田-三嶋-濱口-三上-エスコバー-パットン-山﨑

スタジアムを真っ赤に染めさせているカープに敬意を評して、広島が赤く染まるように右投手を赤にしてみたが、この一覧を見れば一目瞭然。
カープは真っ赤っかのか、右投手のみの片肺飛行でシリーズを戦っていたことがよくわかる。

投手の左右のバランスをみれば、圧倒的に横浜に分があったのだ。
これでは短期決戦の一発勝負で、どちらに1勝のアドバンテージがあったのかわかったものではない。
      
カープには今、ジョンソン以外に左投手はいない。
いやいや有望な人材はいるではないか、そう抗弁される向きもあるかもしれないが、現にシリーズに登板できた左腕はジョンソンしかいなかった。

たぶん来シーズンは出てくるはずだ、という楽観も禁物だ。
確率はどうあれ育つか育たないかが賭けである以上、保険としてドラフトで有望な左腕を獲りに行くは常道中の常道ではないのか。

そのことに思いいたらなかったかのような今回のカープ球団のドラフト。
そのツケが早々に返ってくるとは思えないが、盤石にみえるチームがこんなところから破綻しはじめるのかもしれない、そんな危惧を抱いたドラフトだった。












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