「トラックが土運んでますよ。知ってました?」
出張帰りに高速道路から目撃したプリンは、興奮気味の声を携帯電話から送ってよこした。
「大型トラックがピストン輸送で残土を運んでますよ」
「ほんまか?」
興奮が伝染したノボルも声を張りあげた。
「順番を待ってるトラックが高架まで何台も並んで待機してます。ブルドーザーも入ってて、もう段々畑は跡形もなくなってますね」
プリンの声は熱っぽくうわずっていた。
その連絡が入ったつぎの日曜日が、とうもろこしの会の2シーズン目の作業日になった。
…
(「わしらのフィールド・オブ・ドリームス」より)
グラウンドエイドが終わってからは
現地ですることもなく
年を越してもしばらくは
なすべきことも思い浮かばないまま
無為に時間が過ぎていくばかりでした。
その“冬眠”を破ったのが
前記の1本の携帯電話。
たしか3月に入ってすぐのころでした。
すぐに現場に飛んで行ってみると
あたりの景観は一変していました。
そこにはだだっ広い平地があるだけ。
農地だった痕跡はまったく消え失せていたのです。
その様子を目にしたとき
メンバーのだれからともなく
「これで、ぼくたちの責任は大きくなりましたね」
そんなことばが漏れていました。
このとき、ぼくたちの思いつきだった「遊び」が
本気で遊ばなければならないプロジェクトとなったのでした。
上の写真が現地の空撮です。
すでに完成間近のころのものですが
造成後の全貌がよくわかると思います。
写真上がホームで、手前がセンターです。
そのすこし右手に「シューレス・ジョーの橋」が見えますね。
外周を緑に彩っているのは
外野フェンスにしたトウモロコシ畑です。
造成がすむのを待つ間
会のメンバーでグラウンドのレイアウトをどうするか
いろいろ検討した結果
計画では写真左手のライトの側に
ホームを設ける予定だったのです。
ところが造成がすんでみたら
すでにバックネットとなる壁までつくられていた。
でもそれが結果オーライでした。
もしぼくたちの計画のようにレイアウトしていたら
マウンドの上にかかる太陽が目に入って
ゲームにならなかったでしょう。
町の専門家が造成の際の図面を描いてくれたようですが
大いに助かりました。
まずは最初のボタンをかけちがうことなく
野球場づくりはスタートできたわけです。
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