2017年10月28日土曜日

カープCS敗退と「右腕コレクション」

『清宮幸太郎狂躁曲』とでもいおうか、高校通算本塁打111本を記録した破格のスラッガーが台風の目となって日本を縦断する騒動となった2017年ドラフト会議。
結局、清宮はロッテ、ヤクルト、日ハム、巨人、楽天、阪神、ソフトバンクの7チームから1位指名を受け、抽選の結果日ハムが選択権を獲得した。

シーズンオフに大谷翔平選手のポスティングでのメジャーリーグ転身を容認している同チームに、同じくメジャー志向の清宮が入れ替わるように入団することになったのも縁といえば縁なのだろう。

この“清宮颱風”からいち早く退避して、この夏の甲子園で6本のホームランを放ち大会最多本塁打記録を塗り替えた地元の星、中村奨成捕手の1位指名を公言していたカープ。もしや1本釣りに成功かとも思われたが、中日も1位指名したことで2チームの競合になった。
しかしカープは、シーズンの戦いぶりそのままに中日を一蹴して緒方監督が選択権を引き当てた。

先のCSで横浜の下克上をゆるしてしまい、リーグ連覇の熱気に水を差し日本シリーズ制覇の期待を裏切ってしまったばかりのカープが、ドラフト会議という余興で一発芸を見せてくれたことでファンは溜飲を1ミリほどは下げることができた。

ここで、あらためてことしのドラフト会議でカープが指名した選手を確認してみたい。

 1位 中村奨成 捕 手 右右 広陵高
 2位 山口 翔 投 手 右右 熊本工高
 3位 ウムナ ブラッド 誠 投 手 右右 日本文理大
 4位 永井敦士 外野手 右右 二松学舎大付高
 5位 遠藤淳志 投 手 右右 霞ヶ浦高
 6位 平岡敬人 投 手 右右 中部学院大

育成枠

 1位 岡林飛翔 投 手 右右 菰野高
 2位 藤井黎来 投 手 右右 大曲工高
 3位 佐々木健 投 手 右右 小笠高

ご覧のように捕手の中村と4位で指名した永井外野手以外は、すべて投手だった。

数だけみれば是が非でも将来の主軸投手がほしい、という戦略のあらわれのようにとれるが、どちらかといえば内野も外野もバブリーになってきたカープ、強いて野手を補強することもないだろうから投手にいきますか…、的なスタンスでの補強でこのような構成になったとみるのが妥当だろう。

その方向性は納得するてしても、さてさて、その内容についてはどうだったのだろうか?

もちろん将来、この投手たちの中から絶対のエースがでてくるかもしれない、盤石の抑えが誕生するかもしれない。
しかし、「左投手がひとりもいなかった」という結果から、今回のドラフトを個人的には評価できない。
というより「なに考えとるんじゃ!」と、不満がさきにたってしまった。

6位指名で打ち止めになった時点で、右投手しかいなかったことに落胆し、育成枠でさらに右、右、右と指名されるごとに呆れ顔がズムスタのように真っ赤に染まって怒りに変わっていくのがわかった。
なにが悲しくて意地になっているのか、もしかしてファンに当てつけでこんな指名をしているのか、正直、球団の正気を疑った。

全体的に有力左腕不足だったのはあったとしても、CSで不覚をとった横浜が投手を5人指名したうち、ドラ1の東克樹投手をふくめて2人が左腕というバランスのよさだったのを見るにつけ、「ドラフトでも采配負けかよ」と愚痴のひとつもいいたくなった。

もう左投手はお腹いっぱい、それならわかる。
いくらでも育ってきている、というのなら納得する。

しかし、いまカープにこれといった左腕はいないのが実情だ。

今回のCSファイナルで敗退した横浜戦をふりかえってみれば、それは顕著にあらわれていた。
横浜のラミレス監督が、先手先手で左右の投手を投入して局面を打開していく華麗な采配を指をくわえて見ながら、カープはシーズン同様の順番で右投手を繋いでいく凡庸な戦略を取らざるをえなかった。

ファンには振り返りたくもないだろうが、ここで両チームのCS全試合での投手起用をみてみたい。

 第1試合 広島 薮田
      横浜 石田

 第2試合 広島 野村-九里-今村-中田-ブレイシア
      横浜 濱口-パットン-山﨑

 第3試合 広島 ジョンソン-今村-一岡-ジャクソン-中﨑
      横浜 井納-三上-砂田-須田-エスコバー-パットン-山﨑

 第4試合 広島 薮田-九里-今村-一岡-ジャクソン-中﨑
      横浜 ウィーランド-砂田-三上-エスコバー-今永-山﨑

 第5試合 広島 野村-大瀬良-中田-今村-一岡-ジャクソン-中﨑
      横浜 石田-三嶋-濱口-三上-エスコバー-パットン-山﨑

スタジアムを真っ赤に染めさせているカープに敬意を評して、広島が赤く染まるように右投手を赤にしてみたが、この一覧を見れば一目瞭然。
カープは真っ赤っかのか、右投手のみの片肺飛行でシリーズを戦っていたことがよくわかる。

投手の左右のバランスをみれば、圧倒的に横浜に分があったのだ。
これでは短期決戦の一発勝負で、どちらに1勝のアドバンテージがあったのかわかったものではない。
      
カープには今、ジョンソン以外に左投手はいない。
いやいや有望な人材はいるではないか、そう抗弁される向きもあるかもしれないが、現にシリーズに登板できた左腕はジョンソンしかいなかった。

たぶん来シーズンは出てくるはずだ、という楽観も禁物だ。
確率はどうあれ育つか育たないかが賭けである以上、保険としてドラフトで有望な左腕を獲りに行くは常道中の常道ではないのか。

そのことに思いいたらなかったかのような今回のカープ球団のドラフト。
そのツケが早々に返ってくるとは思えないが、盤石にみえるチームがこんなところから破綻しはじめるのかもしれない、そんな危惧を抱いたドラフトだった。












2017年6月8日木曜日

“バティスタ現象”の序奏

6月7日の試合
広 島 021410000-8
北海道 101100000-3

勝 大瀬良4勝 負 斎藤1勝2敗 

本塁打 バティスタ3号、4号
前の試合で初のスタメン出場したバティスタ選手は無安打と不発に終わったが、この試では打棒が炸裂した。

2回表の初打席に逆転の2ランホームラン。
そして2打席目の4回の二塁打をはさんで5回にはソロホームランと、札幌ドームの広さをものともしない豪打を見せつけた。

その破壊力、飛距離には目をむくが、それにもまして「前日は詰まった当たりばかりだったから、ミートポイントを前にすることをこころがけ」て、さっそく結果を出す、その自己分析と修正能力には恐れ入った。

これで出場4試合で4ホームラン。
そろそろ去年の鈴木誠也の「神ってる!」のように、“バティスタ現象”を形容するフレーズが生まれてきそうだ。

「神ってる!」の向こうをはれば「バチってる!」になるが、それじゃ罰が当たってるみたいで賛同を得られそうもないか。(笑

                            *

この試合の私的MVPは、そのバティスタ選手。



2017年6月7日水曜日

手を打って逆転勝利したカープと…

6月6日の試合
広 島 000100300-4
北海道 020001000-3

勝 薮田5勝1敗 負 宮西2敗 S 今村1勝1敗10セーブ

本塁打 新井6号

1対3で迎えた7回裏のカープの攻撃。

ノーアウトから四球で会沢が四球を選んで出塁すると、カープベンチは即座に代走に上本を起用。それが功を奏することになる。

つづく田中のセカンドゴロで二塁封殺を狙った杉谷が二塁に入ったショート石井に送球しようとしたものの間に合わないと判断、からだを反転させて一塁に送球したがバランスをくずして悪送球に。

これで田中がランナーに残ったばかりか、ボールが転々とする間に走者はそれぞれ進塁してノーアウト二、三塁の絶好のチャンスがカープに転がり込んだ。

ここで菊池が放ったセカンドゴロの間に三塁走者が帰ってカープは難なく1点を返した。
菊池の打球はボテボテというものではなく、前進守備を敷いていれば本塁でタッチアウトは可能だったが、ファイターズベンチは手を打たなかった。

つづく丸にレフト前へのタイムリーヒットが出て3対3の同点。4番鈴木はライトへのフライに倒れたものの、エルドレッドが低めのフォークボールをうまくためて拾い上げ、レフトライン上に落ちるタイムリーヒット。
これでカープは逆転し、そのまま逃げ切った。

ふりかえってみれば、2回裏のファイターズの先制点もノーアウト二、三塁の場面で三塁内野ゴロであげたものだった。

この場面でカープは先制点を阻止するために本塁タッチアウトを狙って前進守備を敷いていた。
ただ、ゴロが高く弾んだために帰塁をゆるしてしまったのだが、手は打っていた。

攻撃でも守備でも、ケースバイケースで手をうっていたカープと、こまねいていたファイターズ。
それがそのままゲームの帰結につながってしまったような試合だった。

                      *

このカープ勝利への流れを生んだのが、4回の1点だろう。
これが地味に存在感をはなっていた。

そう新井のソロホームランによる1点だ。
これが反撃の布石となったといっても過言ではない。

この試合で新井はホームランをふくめて4打席2安打1四球1打点1得点の活躍。
6回には今シーズン2個目の盗塁も決めるなど、覇気あるプレイを見せた。

中国新聞のコラム「球炎」によれば、2軍落ちした堂林に代って「俺じゃだめなんですか」と首脳陣に直訴した「一軍の責任(感)」からの、新井らしい集中力と発奮だったようだ。

コラムには、編成上の都合から、調子が上向いていた堂林の登録を抹消したことで、「ナインにはどんよりムードが漂った中」で新井は前言を首脳陣に問い掛けたとあった。

ならば私も首脳陣に問いかけたい。

「なぜ堂林にかわって登録されたのが白濱(捕手)なんですか」と。

正直、逆転に湧くベンチのなかに白濱がいるのを見かけたとき、なんともいえない違和感を覚えた。

「編成上の都合」が白濱を入れるための堂林抹消とすれば、首脳陣のセンスを疑うし、もしそれが球団上層部からの圧力であったとすれば、チームには将来的に“もどんよりムード”が霞のように漂うことになるだろう。
それはあってはならないことだと思うのだが…。

                          *

この試合の私的MVPは新井貴浩選手。
ゲームでの活躍もさることながら、チームのことをおもんぱかって首脳陣に直訴したキャプテンシーというか“ベテランシー”に敬意を表して。












2017年6月5日月曜日

バティスタと中村祐・途切れない二人

6月4日の試合
千葉 000001000-1
広島 10012201X-7

勝 中村祐3勝 負 佐々木2勝5敗

本塁打 エルドレッド15号 丸8号 バティスタ2号
6回に代打で登場したバティスタが、またホームラン。
土肥投手の高めに抜けたようなチェンジアップを捉えた打球は、弾丸ライナーとなってレフトスタンドに消えた。

これでプロ初打席から2打席連続の代打本塁打。
こんな記録はかつてあったのだろうか。

この快挙を前にしてもっとも驚いたのは、自分があまり驚かなかったことだ。
きっと彼ならやるかもしれないという予感が、かなりの現実味を帯びてあったからだろう。

まあこのまま未来永劫ホームランを打ちつづけることはないだろうが(笑、どこまでの選手になるのか期待感は膨らむばかりだ。

試合はといえば先発の中村祐投手が6回を1失点に抑える好投。中継ぎの中崎、中田も締めて、まさか緒方監督の洒落っ気ではないだろうがなかなか粋な「中」継投でカープは快勝した。

これで中村祐投手もプロ初登板から3連勝。
バティスタに負けず劣らず地道に快挙をつづけている。

この試合の私的MVPは、その中村祐投手に。










2017年6月4日日曜日

バティスタが放ったホームランの戦慄

6月3日の試合
千葉 003100001-5
広島 00300210X-6

勝 一岡2勝2敗1セーブ 負 松永1勝1敗

本塁打 清田3号
    鈴木11号 バティスタ1号 松山3号

試合の流れを一変させるホームランというものがある。
エルドレッドが放つ超ド級の大ホームランなどは、その代表的なものだろう。

しかし、そんなホームランをも凌駕して「今後のペナントレースの行方を一変させてしまう」ホームランというものもあるんだと、6回裏にバティスタの大飛球がバックネット横のスタンドに吸い込まれるのを茫然と見送りながら思った。

「なんと…!」

そんな断片すらことばにならず、叫び声がもれただけだった。

状況が状況だ。
前日に育成から支配下選手登録されたばかりの選手が代打で登場して、いきなり逆転の大ホームラン。
この場面で絵に描いたような結果が出せるとは、「神ってる」には慣れっこのファンもさすがに度肝を抜かれたことだろう。

こんなショックを、かつて経験したことがあった。

ヤクルトスワローズのボブ・ホーナーが出現したときだ。

FA宣言したものの高額年俸がネックとなってどの球団も獲得に動かず、浪人するところを1987年にスワローズと契約したバリバリのメジャーリーガー。

そんな話題性もあって騒然としたなかでのデビュー戦(5月5日の対阪神戦)で、さっそく初ホームランを放つと、次戦では1四球をはさんで3本のソロホームランをスタンドに放り込んだ。

そのどれもが、ボールが潰れるかという桁外れのホームランで、観客は興奮するどころかバリバリのメジャーリーガーの破格の破壊力を息をのんで見守るしかなかった。

あのときの衝撃を、バティスタがダイヤモンドをまわっている姿を見ながら思い出していた。

「とんでもないヤツが現れた」

片やバリバリのメジヤーリーガー、片や年俸500万円の育成上がりという好対照に苦笑いしながら、そんな驚きを噛み締めていた。

緒方監督が「まだ即戦力とは考えていない」といっているように、まだ未知数なところはあるのだろう。
しかしとてつもない素材であることに間違いはない。

いま、あのときの驚きは、高揚感をともなった当惑に変わっている。

このバティスタがあらたに加わって、はたしてカープはどこまで強くなってしまうのだろうか…、という。

試合は、腰痛から復帰の野村がピリッとせず、122球を要して5回4失点。3回に鈴木のホームランなどで同点にしてもらってすぐに失点する悪い流れをつくってしまったが、バティスタのホームランに救われた。

欠場の菊池にかわって二塁に入った安部が猛打賞の活躍。


この試合の私的MVPは、いうまでもなくバティスタです。














2017年6月3日土曜日

「背信の九里」と書けない事情が?

6月2日の試合
千葉 400000000001-5
広島 000040000000-0

勝 松永1勝 S益田3敗7セーブ 負 ブレイシア2勝1敗1セーブ

本塁打 エルドレッド14号 田中3号

先発の九里が初回に4失点の乱調で、いきなりゲームにミソをつけてしまった。

カープは5回にエルドレッドのソロと田中の3ランホームランで同点に追いついたものの、延長12回に勝ち越されて惜敗。

ゲーム開始早々に大量失点のビハインドを頂戴。なんとか食らいついていったものの後手を踏んだツケは大きく、最後には引導を渡されての敗戦となった。

そんなゲーム展開の煮え切らなさよりも、翌日の地元某新聞の報道ぶりになんともいえない後味の悪さを感じた。

紙面をぱっと見して、試合の結果がオブラートに包まれていて、すっきりしないなのだ。

「敗戦が見事に希釈されている」とでもいうのだろうか…。

その記事の見出しはといえば、

 「コイ12回力尽く」

 「ブレイシア決勝打許す」

そこからは「先発九里の期待はずれの投球によってカープが負けた」という事実が巧妙に隠されているように見える。


本文を読んでも、まるで九里投手はアンタッチャブルで、ブレイシアひとりに責任を転嫁して記事を流している印象なのだ。

「ブレイシア決勝打許す」は別にしても、一般的な報道センスからすれば、見出しはつぎのようになってしかるべきだろう。

 「九里ゲーム壊した初回4失点」

 「打線奮起もおよばず」

それを意図的に改編した。そうとしか思えない軟弱ぶりだ。

そこからは何かに、誰かに“忖度”しているとしか思えない不自然さが伝わってくる。

本文に併記されたコラムにいたっては九里の“背信”、カープの負けには一切ふれずに「ナインの力 引き出す拍手」と、ファンの応援ぶりをヨイショしての、いわゆる提灯記事。

筆者もその“配慮”に後ろめたさを感じているのか、それとも行間に苦衷を察してほしいとの思いがあったのか、つぎのような興味深い表現があった。

「いきなり4失点した九里の乱調に責任を押し付け、さっさと敗戦の手続きを進める手だってある。真っ赤に染まるスタンドがそれを許さない」

この文章が私にはつぎのように読めた。

「いきなり4失点した九里の乱調の責任論から敗戦の記事を書き進める手だってある。(しかし)スタンドを真っ赤に染めさせている球団がそれを許さない」

カープ球団がフロント、監督批判を新聞や雑誌に書かせないのは広く知られていることだ。
それを知らずにか書いてしまった某スポーツ新聞社の某記者が球団オーナーに呼びつけられて恫喝されたらしいというのは有名な話。

またある人物は核心に迫る取材ぶりや「是々非々で書くスタンス」が疎まれてか、出入り禁止になった。

かくいう私も、「是々非々で書いた本」が球団トップの逆鱗に触れたようで、どうやらなにがしかのペナルティーを課せられているらしい。

もちろんそんなリアクションははじめから想定内で、とくに驚いたわけでも憤っているわけでもないのだが。(笑

チームが絶好調で人気もうなぎのぼり鯉のぼりの今、球団の以前からの“唯我独尊”ぶりはさらに拍車がかかっていることだろう。

ひっきょうメディアの忖度、自主規制はますますひどくなって、いま「カープ村」の言論空間はどんどん閉鎖的で息苦しいものになってきているのかもしれない。

それにしても、たかが記者やライターを恫喝したりてみたり、出入りのグッズ業者に消費税を転嫁するなと強要してみたり、グラウンドで戦っているあのさわやかなチームとは対照的に、陰湿で弱いモノいじめの好きな球団だこと。




備忘録

6月1日の試合
広島 020000000-2
西武 00022000X-4

勝 十亀2勝2敗 負 岡田5勝2敗 S 増田1勝1敗9セーブ

本塁打 松山2号

カープはライオンズを3タテできず、連勝が7でストップ。

強気に真っ向勝負をいどんできた十亀投手に気圧された感あり。
お得意さんにしている松山の2ランによる2点のみ。

備忘録

5月31日の試合
広島 000260100-9
西武 001000003-4

勝 大瀬良3勝 負 ガルセス1勝1

大瀬良が制球に苦しみながらも5回を1失点で投げきり、打っては会沢の逆転2ーラン、堂林の今季初ホームラン、鈴木のチーム通算8000本目となる10号が飛び出して、カープがライオンズを怒濤の寄りで押し切った。

野手に石毛、秋山、清原、デストラーデ、伊東…。
投手に工藤、渡辺久、塩崎、郭、1980年代から90年代にかけて無敵をほこった西武ライオンズ。

そのときのチームの姿が、この試合のカープの攻撃ぶりに重なって見えるようだった。

これでカープは7連勝。

2017年5月31日水曜日

野球をプレイする環境の差

5月30日の試合
広島 000100013-5
西武 000000000-0

勝 薮田4勝1敗 負 野上4勝5


投手陣の台所事情から交流戦の緒戦という大事な試合で登板することになった薮田投手が、これ以上ない好投をみせてカープは白星発進した。

前の登板では先発野村投手のアクシデントで急遽スクランブル登板して好投。勝ち投手となっていたが、そのまま彼の代役として大役を果たした。

使い勝手のいい投手といっては失礼だが、どんな局面でも対応できる意外に器用な投手だ。
こんな投手がブルペンにいれば、ベンチはどれほど心強いことか。
家庭では孝行息子らしいが、まさにベンチの孝行息子といえそうだ。

それにしてもメットドームですか、名前だけでなく見た目もひどい球場になってしまったものだ。
竣工したときはオープンで開放的な球場で 、看板広告もほとんどなくて清潔な印象だった。
それがいまでは屋根でフタをして広告満載の、身もフタもない息苦しいばかりの球場になってしまった。

ゲームを観戦しながら、その内容よりも、こんな環境で野球をやらされている選手たちに同情するばかりだった。


その点、カープの選手たちはめぐまれている。

どうのこうのいっても、ズムスタ(この名前はいただけない)を本拠地にしていることが、いまカープが黄金期を迎えようとしている強さにつなかっていることはまちがいないだろう。



2017年5月29日月曜日

きのうの今日ですが…

5月28日の試合
広島 0000002001-3
讀賣 0010100000-2

勝 今村1勝1敗8セーブ 負 カミネロ2敗13セーブ

本塁打 エルドレッド13

6回までジャイアンツの田口に完璧に抑えられていたカープ打線が7回のワンチャンスをものにして同点にもちこみ、延長の10回にに突き放してジャイアンツを3タテして5連勝。対ジャイアンツ戦は初優勝の1975年以来の7連勝となった。

その7回の攻撃は3番丸が三振に倒れて1アウトから、4番鈴木が四球を選んだあとに飛び出した5番エルドレッドの2試合連続となる13号2ランホームランによるものだった。

これは結果論だが、もし前の試合と同じ打順で5番安部、6番エルドレッドであったら、安部のピッチャーゴロでゲッツーになっていて、この回の得点はなかった。

それを思うと、あえてこの試合で打順を組み変えてきた緒方監督の勝負勘恐るべしというしかない。
まさに“神ってる”。

この日タイガースがベイスターズに破れたため、カープは首位に返り咲いた。

                          ✱

采配に異を唱えたきのうの今日でお恥ずかしい限りだが、この試合の私的MVPは緒方孝市監督だ。




2017年5月28日日曜日

近視眼的に過ぎた九里投手の交替

5月27日の試合
広島 031302000-9
讀賣 000000000-0

勝 九里4勝4敗 負 宮国5

本塁打 エルドレッド12号

8回まで被安打3、無失点で抑えて来た九里投手を緒方監督は続投させずに交替した。

その判断は尊重したいし、ダッグアウトで九里投手に握手を求めて労をねぎらった配慮にも敬服した。

とはいえ、やはり九里初完封のチャンスの芽を摘んでしまったことには頭を傾げざるをえない。

緒方監督はその理由を「先発ローテーションの頭数が足りないなかで交流戦を迎えるわけで、先を見越さないと」と語っていて、いうまでもなくフィジカル面の疲労を考えてということだった。

先発投手の球数が次回登板にどれほど影響するのかは知らないが、よほどデリケートなものであることはわかる。
そのことを投手本人の体感とは別に、監督としての経験則として彼が認知しているということはあるだろう。

しかしこの降板は、監督の思わくとはちがって皮肉にも近視眼的な措置になってしまったように思えてならないのだ。

完封の機会というのはそれほどあるものではない。
『ミスター完投』と称された黒田博樹ですらシーズンに1、2回できるかどうかの難事業だ。
これから近いうちに九里投手にそのチャンスが訪れるかどうかはわからない。

もしかしたらシーズン中にはないかもしれず、九里投手は“未完封投手”としてシーズンを終える可能性はすくなくない。

その黒田博樹は「優勝を経験したことのない投手は一流とは認められない」と、FA権を行使して「優勝できるチーム」を求めてカープを去っていった。

優勝しているかどうかは、それほど投手本人にとって大きな意味を持っている。
だとすれば「完封したことすらない投手」が一流投手とは認められだろう。

『未完封投手』
周囲からはそう見られるだろうし、本人はいつまでも殻を破れないままだ。

ゲーム後にヒーローインタビューを受けていた九里投手。
あのとき「初完封おめでとうございます」とマイクを向けられていたら、すでに彼は投手として別物になっていただろう。
そう、「一流投手」と周囲から認められる投手になっていたはずだ。

緒方監督はペナントレースを大局的にとらえて「九里投手の体力を温存した」わけだが、それは逆に目先の利に走った采配だったように思う。

いまローテーションの頭数にこだわって九里投手をローテーションで投げさせつづけるのと、その九里に代えて『一流投手九里』を加えて戦うのとでは、投手陣の厚みはまったくちがうものになったのではないだろうか。

8回で降板させたメリットは、たった1回分のフィジカル面でのことでしかない。
もし続投させて九里投手が完封でもしていれば、これから先のペナントレースでの彼の投げっぷりはまったくかわったものになった可能性が高い。
堂々の『完封ピッチャー』として…。

そんなイメージが頭に浮かぶいま、やはりもったいない投手交替だったとしか思えない。

15安打で9得点の完封勝ち。対ジャイアンツ戦は22年ぶりという6連勝を飾った試合だったが、すこし後味に苦さが残った。

                         ✺

ということで、この試合の逆MVPは緒方監督。
というのは冗談で、残念な思いと同情をこめて私的MVPは九里亜蓮投手だ。




2017年5月27日土曜日

“キラー”誕生の予感?


5月26日の試合
広島 000103120-7
讀賣 000000110-2

勝 岡田5勝1敗 負 マイコラス4勝3敗

本塁打 菊池3号
久々のスタメン目線です。

6番ファーストに松山、レフトには野間が入って、新井とエルドレッドがベンチスタートとなった、いわば『純和風若ぶり打線』。

松山が2安打1打点。野間は結果が出なかったものの替った堂林が1安打1得点と、まずまずの成果があったといえるでしょうか。

どうせ野間に代えて堂林を出すのであれば、はじめから彼はファーストに入れてほしかったというのが個人的な趣味ではありますが。
野間の代打に堂林より、松山の方が脅威でしょうから。

それはさておき、この試合はなんといっても岡田投手の好投。これにつきますでしょう。

7回を投げて被安打6、失点1で勝ち投手となって、これでジャイアンツ戦はプロに入って負けなしの3連勝。
どうやら相性がいいみたいですね。

かつて王、長島時代のジャイアンツ戦には“ご褒美”がふんだんに出たとかで、それ目当てにはりきって勝ち星を積み上げた安仁屋宗八氏は、“ジャイアンツキラー”といわれていました。

実績でいえばまだまだですが、いずれこの称号が彼のものになるかもしれない。
そんな愉しみがひとつできました。

ということで、この試合の私的MVPは岡田明丈投手です。

2017年5月25日木曜日

備忘録として

5月24日の試合
東京 000000100-1
広島 10100202-6

勝 大瀬良2勝 負 石川4勝4

本塁打 鈴木9号


堂林が7番レフトで今季2度目のスタメン出場。
彼のレギュラースタメンが成立するようになれば、またカープにひとつ強さが加わるような気がするのだが。

その堂林、2打席目の4回裏にスワローズ先発の石川からレフト前にヒットして存在をアピール。

先発の大瀬良は6回を被安打3、与四球1、無失点と、好投して遅ればせながらの2勝目をあげ、首位タイガースとのゲーム差0.5に。

これでカープはビジターでドラゴンズに3連敗から一転してホームでスワローズに連勝。
内弁慶ぶりが際立ってきた感あり。

ホームでの熱狂的な応援が常態となった弊害とでもいうのだろうか、ホームとビジターでの戦いぶりの落差が顕著だ。

前日に腰の違和感で3回に降板した野村投手が出場選手登録抹消。

                        *

私的MVPは大瀬良大地投手



2017年5月24日水曜日

ファンの特権


5月23日の試合
東京 020000000-2
広島 01101000X-3

勝 薮田3勝1敗 負 ブキャナン2勝3敗 S今村0勝1敗8セーブ

ジョンソン投手の復帰にメドがたったと思った矢先、野村投手が腰に違和感を訴えて3回で降板するアクシデント。ローテの柱が順に痛んでいる。

これを前年の覇者に課せられた「試練」ととらえるのは、ファンのロマンチシズムというものだろうか。
とはいえ、その危機的状況を救った投手にヒーロー像を見るのはファンの特権というものだろう。

4回から緊急登板した薮田投手が6回までを被安打2、2奪三振、失点0に抑える好投でカープに勝利をもたらしたばかりか、前の試合の守乱から野村投手の降板へとつづいた嫌な流れを断ち切った。

そして7回には腰痛から復帰した中崎投手が、三者凡退に抑える好投を見せると、ジャクソン、今村の「とりあえず勝利の方程式」でカープが逃げ切った。

それにしても、腰を痛めて野村投手が降板した試合で、腰痛でリタイヤしていた中崎投手が復帰するかな。

「これも神様の悪戯かい?」と苦笑してみるのもまた、ファンの特権というものだろう。

ということで、この試合のヒーロー、私的MVPは薮田投手だ。

2017年5月22日月曜日

ばたばたはチームにも

5月21日の試合
広島 001000120-4
中日 10102012X-7

勝 吉見1勝4敗 負 福井1勝2敗 S田島1勝1敗11セーブ

本塁打 田中2号 ゲレーロ9号


シーズン開幕当初は、あきれるほど強かったカープが今、あきれるようなゲームをしている。

この試合で負け投手となった先発の福井投手は試合後に「ばたばたしてしまった」と反省の弁をのべたというが、それはここ最近のチーム自体にもいえそうだ。

どうもチームそのものが「ばたばたしている」印象だ。

この試合でもつまらない悪送球や守備の判断ミスがことごとく追撃ムードに水を差す失点につながった。

ついこの間のズムスタで、草野球まがいのドラゴンズのお粗末な守備に苦笑していたのが、攻守ところを変えて戦いの場をナゴヤドームに移した途端に立場が逆転してしまった。

グラウンドでばたばたしているせいか、チームのオーダーに落ち着きのなさが見て取れて仕方がない。

先発オーダーをつぎつぎに変えながら勝ちつづけていたときは、「いくつかのオプションを持って戦う」という首脳陣の考えがハマっていたように見えたが、菊池の戦列離脱あたりから、その結果がいつか「オーダーの落ち着きのなさ」に帰結してしまったように思えてならない。

結果論といわれればそれまでだし、まだ最終的な結果がでたわけではないが、それが正直な感慨だ。

新井選手をベンチにさげて4番にあげた鈴木が一本立ちした。
そのこと自体はめでたいことだが、それで新井のモチベーションがさがったように思えてならない。

このところの彼のプレイからは以前のような覇気が感じられないのだ。

「おれが引っ張らなくては」という気概のつっかえがはずれて、無意識に肩の荷を下ろしてしまったように見えてしかたがない。

たしかに鈴木選手は4番の責をまっとうしてあまりある数字を残してはいる。
しかし、それで去年の4番新井の代わりが務まっているかは疑問だ。

今シーズンにかぎっていえば、まだまだベテランの新井には引っ張ってもらわないといけないのではないか。

肉体的にはいうまでもないが、新井はモチベーションという精神的な限界とも戦っている。
首脳陣がこれをうまく引き出していけないようでは、この「オーダーの落ち着きのなさ」はいつまでも解消できないように思う。

これでカープは最下位ドラゴンズ相手に同一カード3連敗。
一寸先はわからないが、とりあえずは短いトンネルをみずから掘ってしまった。












2017年5月21日日曜日

菊池離脱に見る2017年のベナントレース“予感”

5月20日の試合
広島 000100000-1
中日 01000100X-2

勝 又吉3勝 負 九里3敗4敗 S田島1勝1敗10セーブ


菊池選手の名前が、ふたたびスタメンから消えた。
そしてカープはといえば先発九里投手の粘投空しく、攻守に精彩を欠いてドラゴンズに連敗した。

実は今シーズンがはじまる前、「今年のカープを占う」という企画である方とプライベートの対談をしていた。

広島市内のホテルのロビーでお茶をしながらというフランクな雑談のようなものだったのだが、それがモノになりそうだったら開幕前にテキストにまとめて『カープ学講座』で披露してみたいという腹づもりだった。

チーム力を客観的に評価するという専門的な視点からのものではなく、ファン感情をぶつけ合うようなものでもなく、選手たちの性格とか運勢的なところから占ってみようという“お遊び”。

選手たちも人間である以上、もてる技術や体力をそのまま発揮できるわけではないだろう。
もともと持っている性格や、そのときの感情やモチベーションの強弱、それらに少なからず影響を与えている運気というものにも左右されているはずだ。

あえていえば、グラウンド目線ではなく、見えない部分から今年のカープを占ってみようというアイディアだった。


しかし、残念ながら身内にごたごたがあって時間をとられてしまって、それは実現しなかった。

それでもそのときの対談の内容はずっと頭にあって、実際のカープの戦いぶりと照らし合わせて思い出しては、面白く味わったりもしている。

ああ、たしかにあの選手のトラウマはまだ解消されていないらしい。
某選手の性格は、こんなかたちで出ていたのか。

シーズンを追うごとに予感や予言を現実がなぞっているようで、驚きとともに甦らせたりしている昨今だ。

                         ✢

そんななかのひとつに菊池選手のことがあった。

実は菊池選手については「なんだかチームからいなくなりそうな胸騒ぎがする」、そんな予感めいた話がでていた。

そのときは、「いずれ近いうちにメジャーに行くか、よそに移籍するということじゃないか」ということで、話は落ち着いた。
菊池選手がずっとカープにいることは考え難いから、ということになったのだ。

ところが今、現実に菊池選手はグラウンドから消えた。
「体調不良」ということで、この試合でもベンチを温めることになった。

「いずれ移籍するのではないか」ではなく「体調不良でグラウンドから消えた」のだ。

予感というか、不安は的中してしまった。

ここまで菊池選手は4試合に休養し、ベンチを温めることになった。
その4試合に、カープはすべて負けているのだ。

予感は「一時的な離脱」というニュアンスではなく、「いなくなる」そんなイメージだったようだ。

もし現実にそうなれば、カープはとんたハンデを背負いながら戦っていかなければならないことになる。
菊池選手の代役で出場の西川選手は、三塁守備でまたエラーをしているし、二塁にまわった安部選手もチョンボをしてしまったが、彼らに限らずいかに選手層が厚いカープといえども菊池選手のかわりはいない。

もともと楽に戦えるペナントレースというのはないのだし、選手の離脱も当然折り込み済みだったろうが、それが菊池選手となると事態は深刻だ。

結論をいってしまえば、対談では「カープが負ける」という結果はでなかった。
たぶん今年も優勝するだろう、ということにはなった。

それが当たることを願う一方で、菊池選手の離脱予感に関しては、はずれることを祈りたい。









2017年5月20日土曜日

ビシエドの打球にみた“サンフレ”の怨念

5月19日の試合
広島 0000110010-3
中日 0101010002-5

勝 佐藤2勝 負 ジャクソン1敗1セーブ

本塁打 ゲレーロ8号 ビシエド7号

延長の10回、2アウト一塁。

ここでジャクソンが投じた初球スライダーを弾き返したドラゴンズのビシエド打球は、サヨナラの2ランホームランとなって左中間スタンドに吸い込まれた。

これで開幕から18試合連続無失点だったジャクソンが初失点。チームとしても5勝1分けと負けなしだったドラゴンズ戦での初黒星となった。
数字的にはまだ貸しの方が多いものの、こたえた1敗にはちがいない。

8回の登板が定番で、「つぎの回がある」場面では完璧に抑えてきたジャクソンだったが、「あとがない修羅場」での脆さを露呈した格好になった。

ところであの打席、ボックスに入ったビシエドのヘルメットには、広島に本店がある家電大手の「EDION」のロゴが鮮やかにあしらわれていた。

カープと戦うドラゴンズの選手のヘルメットに、このロゴがあることに奇妙な感慨を抱いていたところに、このホームランは飛びだした。

頭がすわったスイングで、このロゴを見せつけるように豪快に弾き返された打球。
その白球にはドラゴンズのこれまでの鬱憤が詰まっているように見えたのは当然としても、サンフレッチェサポーターの怨念もまじっているように見えたのは、ぼくだけだろうか。

                        ✺

いまズムスタを本拠地にしたカープは我が世を謳歌している。
連日満員の盛況。グッズは飛ぶように売れ、いったいどれほど儲かっているのか見当もつかない。

「そんなものファンごときが知らんでもええ」とばかりに、球団はその数字を秘密のベールに包み、その向こうで高笑いしている。
ズムスタの所有者である広島市(つまり広島市民ということだが)も、その身勝手を放任したまま恥じることがない。

ところがエディオンが大スポンサーであるサンフレッチェは、山奥の劣悪な環境ともいえる陸上競技場「エディオンスタジアム」に留め置かれたまま、動員に苦しんでいるのが実情だ。

カープがかつて本拠地にしていた広島市民球場の跡地に新スタジアムをと願いつづけながら、広島市と広島県、また財界やお歴々(お察しください・笑)の非合理的で理不尽で滑稽な抵抗にあって、そのプランは宙に浮いたままだ。

そんな苦境にあるサンフレッチェに対して、同じ広島を本拠地にしている球団であるカープは、まるで他人事のように沈黙を守っている。

否、それどころか球団トップは出来もしない場所につくればいいと、トンチンカンな発言すらしているお寒い状況だ。

何年もつづくこの不毛な議論と理不尽な対応。
行政をはじめとする“抵抗勢力”の茶番劇。

そんなものを長く目にしてきた一市民にすれば、あのビシエドの打球にサンフレ関係者やサボーターたちの怨念が乗り移っていたように見えたとしても、なんの不思議もないだろう。

もちろん独りよがりの錯覚にはちがいないのだが…。(笑