アメリカの大統領選挙でトランプの勝利が決まった朝。
それを知った気持ちが空に反映するとすれば快晴になるわけもなく、それでも雲間にのぞく青空に、いくらかの希望を見るようでもあり…。
9.11の自作自演テロを口実にアフガンに侵攻し、イラクという国家を破壊して公然と富の収奪をはじめてからというもの、あの国の政治向きのことには嫌悪感が先にたってしまって、今回の大統領選挙もほとんど無関心にちかいものでした。
侵略戦争が国家の基盤になっているという、あまりほめられたお国ではない大統領選の、どっちもどっちの候補者の、どっちかが勝つというだけのこと。
そんなしらけた気持ちで、対岸のばか騒ぎを遠望していました。
呆れるほどの大金と無駄な時間を費やして「嫌われ者」と「ならず者」の品評会をして、なにが面白いのか。
それが自国だけのバラエティで終わればまだしも、世界に少なからぬ影響を与えてしまうという悪いジョーク。
自国のことは棚に上げて、アメリカの大統領選挙のシステムにため息まじりの苦笑を禁じえませんでした。
ただ今回は第三極の候補がこれまで以上に健闘していて、「もしや」という空気が流れていたのが異例で、トランプの存在もキワものとして気にはなっていました。
とはいうものの、既得権益で固まった支配システムからは外れた候補。どうせそのうち潰されて沈んでいくだろうと予想していました。
ところが、あにはからんやトランプはいつまでも選挙戦から離脱せずプレイをつづけているご様子。
それどころか、可能性さえ語られるようになっていきました。
その執念、しつこさ。
まるで日本ハムファイターズの中島卓也選手のよう。
さきの日本シリーズでファウル、ファウルでねばったいやらしさは、いまだカープファンの脳裏を離れることがありません。
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それはさておき、
もしやこのトランプというカード、あなどれないのかも。
選挙戦が進むにつれて、そんな恐れとも興味ともつかないものがわいてきました。
そのうち目にしたわずかな情報のなかに、「黄色いケツの猿ども(トランプ語で日本のことです)は米軍基地の予算を全額負担するべきだ。さもなくば基地は撤退する」と、彼が主張していることをネットで目にしました。
このことを知ったとき、ちいさな叫びが口を突いて出るのを抑えることができませんでした。
「どうぞ、ご撤退を!」
米軍基地の撤退が現実のものになるかも、そんな期待に胸が震えました。
対米自立が叫ばれるようになった昨今ですが、その出口には容易にたどりつけそうもありませんでした。
それがトンネルの向こうから、わざわざトランプが「こっちから手を振ってやってもいいぜ、クソ野郎ども」といっているのですから、こんなにありがたいことはありません。
もちろん“トランプリスク”というものはあるでしょうが、この米軍基地撤退の可能性だけでも個人的には大きなポイントなのです。
どっちもどっちならばの消極的な「トランプ乗り!」になった瞬間でした。
そうはいっても「ならず者」が大統領になることへの抵抗感は払拭できず、かといって「嫌われ者」のヒラリーではこれまでの日米関係を転換できないのは明らか。
悶々としているうちにとうとう投票日となって、トランプが勝利してしまいました。
もともと結果は二者択一だったわけで、どうせどっちもどっちなら、やはりトランプでよかったかと、いまは自分を慰めているところ。
野球にたとえれば、土壇場に追い込まれてのわずかなチャンス。
ここは消極的なバントよりも、逆転ねらいのヒットエンドランのサインでよかった、と。
もちろんその結果として、吉凶どちらに転ぶかはわかりせんが……
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それにしても、正誤はさておきメディアの「反トランプ一大キャンペーン」にもブレることなくトランプを選んだアメリカ国民の信念はさすが。
度し難き国の愛すべき国民たち。
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