2016年11月29日火曜日

顕彰は“冗談”とともにやってくる

「冗談だと思った」

新井貴浩選手がセ・リーグのMVPを受賞しての気持ちを語っていましたが、あれはいつわらざる心境だったことでしょう。

驚天動地、晴天の霹靂とまではいわないまでも、鳩が豆鉄砲くらったほどには、みなさんも驚かれたようですが、なおさら本人は期待も予想もしていなかったことでしょうから。

このテのことがあると、いつも微笑とともに思い出してしまうのが、カープの初代エースだった長谷川良平氏が2001年に野球殿堂入したときのこと。

もはや殿堂入りはないと諦めて久しかった長谷川さんは吉報の報せを、「いたずら電話かと思った」と語っていました。

その表現が面白く、今回のようなことが起きると引っ張り出しては味わってみるのが癖になっているのです。

あのときの長谷川さんのことばと、今回の新井選手の表現が似ているのは、まさかカープの伝統というわけでもないのでしょうが、なんとなく得心したような気持ちになってしまいました。

パ・リーグの大谷翔平選手の受賞については、異論をはさむ向きはなかったでしょうが、セ・リーグの新井選手に関しては賛否さまざま意見があるようです。

活躍からいえば菊池涼介選手か鈴木誠也選手だろうとか、投手部門のトップを争ったジョンソンや野村祐輔がいたではないか、と。

あるいは優勝チームから出すという慣例にしばられることはない。
ベイスターズの筒香嘉智選手だ、いやスワローズの山田哲人選手だろう、といった声も聞こえてきます。

ぼくは下馬評高かった菊池選手で決まりだろう、そう思っていました。
ほぼシーズン通して活躍しての最多安打。なによりも、再三チームを救ったあの桁違いの守備力はいくら評価してもしたりないほどです。

なので彼が次点になったこともさることながら、新井選手の781点に対して429点と意外な大差だったのにも驚かされました。

菊池選手にくらべると、新井選手の貢献度はすこし物足りない。

一塁をスペア(といっては失礼か)の松山竜平選手やエルドレッド選手に譲りながらの虫喰い出場。タイトルひとつ獲ったわけでもなく、説得力はいまいちです。

しかし一晩明けてのいま、授賞式の報道に接しての気持ちをいえば、落ち着くところに落ち着いたのかな、という印象です。

NPBアワードでの表彰式の様子をみても、賞の大きさに見劣りするようなところもありませんでしたし、それなりにおさまりがよかった。
それはやはり、彼が今シーズに見せた存在感によるものでしょう。

シーズンの成績やグラウンドでの表面的な活躍でははかれない貢献度。それを現場の記者たちが評価しての投票結果ということだったのでしょう。

ぼくの大好きな「タラレバ」になりますが、もし菊池選手が受賞したとして、そのときは逆に「なんで新井選手ではないのか」という不満はどうしても残ったでしょうし、ほかのどの選手にも大谷選手のような圧倒的な説得力はなかったということです。

他チームの筒香選手や山田選手にしても、やはり「優勝していない」というハンデをくつがえすだけの成績ではなかった。
たとえば三冠王でも獲っていれば、文句なしだったでしょうから。

ボブ・ディランのノーベル文学賞じゃありませんが、首位打者や最多本塁打、最多勝や最優秀防御率などのように数値で決めるものでない以上、こんな不満や戸惑いはいつも残ってしまうものなのでしょう。


長谷川良平氏(写真左)の殿堂入りのお祝い広告を企画したときのもの
「悪い冗談かと思った」の苦笑いだったのかも(笑


0 件のコメント:

コメントを投稿