2016年11月25日金曜日

キャッチボールの1球が開いてみせた新天地への扉


さきのドラフト会議でプロ野球の某球団から上位指名され、新天地に身を投じようとしている社会人野球の青年の調整ぶりを見学させてもらう機会を得ました。

すでに、プロでものになった選手ではなく、いつまでもなれない素材ともちがう。
ある才能と運とを秘めた存在が、いままさに新世界にジャンプアップしようとしている瞬間に立ち会っている感覚は、とても新鮮で刺激的でした。

とくに執筆のための取材ということでもなく、ひとりの野球ファン、かつて草野球を遊んでいた野球好きとして体験できた愉快な時間でもありました。

大学から社会人へと進む投手とふたり。

陸上競技場のサーキットで軽くアップしたのち、かなりハードなダッシュを何本かしてから、近くの公園に場所を変えました。

そしてふたりの投手が軽いキャッチボールをはじめたそのとき、それまでの物見遊山な気分はぶっとんで、背中を戦慄が走っていました。

彼が軽く投げた球に、信じられないパワーを見て取ってしまったからです。
それまで、ただただ眺めているつもりだった観察眼が、突然に旺盛な好奇心に変わってしまいました。

モーションを起こすことなく、肘と手首のスナップだけで投げる彼のボールが、その動きとはまったく相関関係がないかのごとく、想像を絶する勢いで相手のグラプ収まったのです。

「世界のバランスが、彼のまわりだけゆがんでしまったのか?」

そんな感覚、といったらいいでしょうか。

これまでのぼくの常識では測れないことが、目の前で起こったのです。
彼が投げる凄まじいボール(キャッチボールのです)と、彼の華奢なからだとがまったく結びつかないことの戸惑いと、とてつもない興奮…。


自分たちで野球場をつくって長く草野球を遊んでいたなかで、いろいろなピッチャーを目にしてきました。

プロの指名を蹴った投手。社会人の現役投手。
元プロ野球の投手と対戦したこともありました。

もちろんキャンプ地や球場のマウンドで、プロの投球をグラウンドレベルで目にした経験はいうまでもありません。

しかし、そんな経験や感覚では測れない事態が、目の前で生起していたのです。

いま同じ公園で草野球を遊んでいる若者たち。
そこに混じっても、なんの違和感もなさそうな青年です。

そんな彼がプロ球団から上位指名された理由。
その答えを、有無をいわさず説得させられた思いでした。

野球というスポーツでときおり目撃することになる奇跡のような瞬間。
彼のキャッチボールの1球が、その扉を開けてしまいました。

しばらくは野球を外から見てみたい、なんて甘っちょろいことを考えたりしてました。
ところが彼が投げた何気ないその1球によって、あらためて野球というゲームに取り憑かれてしまったみたいです。








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