それはわかってはいたが、あらためてその事実を強烈に認識させられたゲームだった。
今シーズンの相性とか終盤の戦いぶりを思えば、もうすこしカープはベイスターズに苦戦するかと思ったが、それは全く的外れに終わってしまった。
ついこの間のジァイアンツとベイスターズとのファーストステージとは、まったく別次元の野球をカープはしていた。とにかくカープの強さ、ソツのなさばかりが目立った試合だった。
一応、スコアを確認しておこう。
横浜 000000000 0
広島 00200021 X 5
勝 ジョンソン1勝
負 モスコーソ1敗
終わってみればジョンソンが105球で3安打完封。打線はといえば、9安打で5得点。守りでほとんど危なげなく、チャンスはきっちりモノにしての完勝。
一応、ルールに則ってシリーズを勝ち上がってきたベイスターズだったが、ペナントレースでは20ゲーム近くの差があった両チームの力量の差がはっきり現れた試合だった。
このクライマックスシリーズにはたして意味があるのか、そんな疑問すら抱かせるほどのカープの強さには戦慄すら覚えてしまった。
まだシリーズで1試合手合わせしただけだが、ベイスターズにもう後はない、いきなり徳俵まで持って行かれてしまったような感すらある。
そう、相撲でいえば15連勝で優勝を決めた横綱と、9勝6敗に終わった関脇が本割後に形式的に土俵に上げられた取り組みを見せられたようでもあった。
下克上のチャンスどころか、ベイスターズにはとことん惨めさを覚えることにならなければいいが、と同情さえ覚えてしまった。
初戦のマウンドに上がったのが、シーズン15勝のジョンソンと5勝のモスコーソという投手力の差。さらに打線の破壊力も選手層の厚さも、機動力も、カープが圧倒していた。
今日の戦いぶりを見る限り、しばらくはカープの黄金時代がつづきそうだ。そんな余計な将来のことまで、考える余裕さえ感じながら観戦した夜だった。
シーズンをぶっちぎりで優勝したように、カープと他チームとの力量の差は歴然としている。総合力は言うまでもなく、走攻守のどれを取ってもカープは抜きん出ている。
今度は将棋のたとえで申し訳ないが、“平手”で勝負してカープに勝つことは難しい。
「1勝のアドバンテージは、逆にベイスターズにハンデとしてやるべきだろう」
そんな冗談めいたことをいいたくもなった。
さらに追い討ちをかけたのが、お馴染みのスタンドを真っ赤に埋め尽くしたファンの声援だ。
緒方監督は「1勝のアドバンテージよりも、このホームでできることの方が大きい」といっていたというが、まさにその効果は絶大だった。
きょうの試合でも、3万を超える赤いユニフォームが、一糸乱れぬ大声援で繰り広げる応援が、カープ選手たちの背中を押し、ベイスターズ選手を萎縮させていた。
試合展開を考慮しないのべつ幕無しの騒動は正直好きではないが、それが選手たちの力になっているという一面は確かに否定はできない。
シーズン中にすでに馴染んだ状況とはいえ、カープの選手たちにもベイスターズの選手たちにとっても、今日はまた格別の異様さだったことだろう。
ボルテージが、またひとつ上がっていたのだから。
例えば、得点にはならなかったが、2回のカープの攻撃で見せたルナの全力疾走。あのボテボテのゴロを内野安打にした走塁は、ファンの声援が後押ししたようなものだった。(そのルナが6回裏の攻撃で一塁に駆け込んだ際にベースを踏みそこねて転倒し、右肩から手首を捻って痛めてしまったのは、「勢い余って」というやつだろうが)
あの激走がチームを勢いづかせたのだろう、つぎの回には二塁打で出た田中を丸が返し、その丸が新井のヒットをタイムリーにする好走塁を見せてカープはあっさりと2点を先制した。
真っ赤に染まったスタンドの3万のファンとも戦わなければならないという圧倒的に不利な条件の中でのこの2点。
この時点で、ほぼゲームは決してしまっていた。
シーズンを終盤まで緊張感を持って戦い、その勢いでジャイアンツを倒して勝ち上がってきたベイスターズ。コンディション的にはややベイスターズが有利かとも思えたが、かつてのベイスターズの前身のホエールズではないが、その巨大なクジラも真っ赤なスタンドはあっさりと呑みこんでしまった。
プロ野球ファンの一人として、このシーズンに新風を巻き起こしながら力をつけ人気を得てきたベイスターズには期待するところが少なくない。カープにはない魅力を、このチームには感じてもいる。
なので、このままなす術なく終わることなく、徳俵から盛り返して、いい戦いぶりを見せて欲しい。
将棋ではいい棋譜を残すことが棋士の願いであり務めでもあるが、カープ・ベイスターズの両チームにはこのクライマックスシリーズでいいスコアを残してくれることを願っている。
0 件のコメント:
コメントを投稿