2016年10月22日土曜日

165キロの説得力か真っ赤なスタンドの大声援か

広島の朝は雨模様。

日本シリーズ第1戦の開幕があやぶまれるが、天気予報では曇り。
たぶん試合はできるのだろうが、カープにとっては25年ぶりのシリーズ。選手にはいい条件でプレイしてほしいし、ファンにはいい環境で観てほしいものだ。

この初戦の先発投手はカープがジョンソン、ファイターズは大谷と発表されている。
ファイターズの大谷は鉄板で、このことに異をとなえるファンはほとんどいないと思うが、カープの投手起用にはさまざまな意見があったようだ。

それは大谷は「まちがいなく勝つ」という前提から成り立っている。
したがってファイターズが第1戦に彼をもってくることに疑問はわかない。

いっぽうのカープ側からみると、「もしジョンソンで負けたら?」という仮定が頭をもたげてしまうというわけだ。

『もっとも勝てる投手』で初戦を落として、つぎの試合に負ければシリーズの流れは一気にファイターズに傾いてしまう。
しかしジョンソンを第2戦目にもってくれば、初戦に負けてもタイブレークに持ち込める可能性は高い。

そうなれば大谷の勝ち星を、インパクトのある勝利を“チャラ”にできる。
そこから仕切り直して、シリーズを戦うべきではないか、まあそういう発想だ。

では第1戦にはだれを持ってくるべきか?

そこで名前があがっていたのが、黒田博樹だ。

「第1戦は落としてもいい」という発想だが、もちろん積極的に落としにいくというわけではない。
「勝負にはいく」わけだから、ここで勝てれば大きなアドバンテージをえるコトになる。
第2戦をジョンソンで勝てる可能性は高いわけだから、そうなれば以後の展開がまったくちがってくるというわけだ。

シリーズを戦うなかで、その7戦をどうとらえるか。
先手必勝で取りに行くか、それとも3つは落とせるという采配をするか、いつも議論になるところだが、今回は前記案に「なるほど」と1票を入れた。

その理由は、興行的な面からではなく戦略的な意味から黒田が地元のズムスタでファンに最後のあいさつ登板ができるということだ。

しかしそれ以上に、第1戦黒田先発をおしたかったのは彼の背負っているストーリーだ。
今シーズンを最後に引退することになっている彼が、シリーズの頭に登板するとなればズムスタのスタンドはいつも以上に異様な雰囲気となるだろう。

緒方監督もいっていたが、このスタンドの声援は大きなアドバンテージだ。
このパワーをさらに倍加させる効果があっただろう。

野球には試合の流れを一変させるプレイというものがある。
たとえばエルドレッドのホームラン。
あるいは菊池の超絶なファインプレイなどもそうだろう。

たがそのプレイはゲームの流れのなかでしか生まれない。
いっぽうの大谷は、第1球目から、いや投球練習の初球から165キロのストレートを投げることでそれができるのだ。
スコアボードにこれが表示されたとき、真っ赤なスタンドは真っ青になって凍り付いてしまうだろう。
スタンドが飲み込まれてしまう可能性大だ。

そのとき先発のマウンドが黒田であれば、試合開始早々に、大谷がマウンドにあがる前にカープサイドが異様な声援でファイターズを圧倒できるではないか。
そうなればゲームを序盤から支配できる可能性は高い、いや高かった。

残念ながら“黒田ケース”としてのそんな場面は観ることがかなわなくなった。
とはいえ、楽しみに変わりはない。

165キロのストレートが真っ赤なスタンドを沈黙させるのか。
それともスタンドの大声援が大谷の戦意をうち砕いてしまうのか。

その攻防がいまから楽しみだ。



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