2016年10月27日木曜日

“内弁慶シリーズ”の行方は?


日本シリーズ第4戦(ファイターズ2勝 カープ2勝)
 広 島 000100000 1
 北海道 00000102X 3
  勝 谷元1勝
  負 ジャクソン1敗
  S 宮西1セーブ
  本塁打 中田1号 レアード2号

これが前日のサヨナラ負けのショックというものなんでしょうか、カープは元気なく、なす術もなく敗退してしまった。

4回表には、エルドレッドの「らしい」大フライをファイターズの近藤が目測を誤って捕りそこね、これがタイムリーエラーになるという僥倖によって1点を先制。
これで流れが来た、とカープファンは小躍りして喜んだはずだが、その幸運をいかすこともできず、ズルズルといたずらに回を重ねてしまった、わがカープ。

地元広島で戦っていたときは「切れ目のない破壊力のある打線」にみえたものだったが、札幌に移動してススキノの風に当たったとたんにフニャフニャ打棒になって、いったいだれが打ってくれるのやらと気を揉むような貧打になってしまった。

勝負なのだから、勝ちも負けるもあるわけで、負けたという事実だけでトガめるつもりはない。
その負け方がよろしくないのだ。

ここは百歩ゆずってサインミス、走塁ミスもよしとしよう。
ただ覇気が感じられなかったのには、心底落胆したし情けなくもあった。

ベンチをのぞき見ても、選手たちの目は虚ろに中空を泳ぐばかり。声を枯らして応援している選手は目には入らなかった。

ただただ手をこまねいて、死刑執行されるのを待つ死刑囚のようにゲームが終わるときを待っているようにしか見えなかった。

ついこの間までグラウンドで見せていたあの得体の知れない一体感、はつらつとした元気はいったいどこにいってしまったのだろうか。
菊池選手ひとり健闘していたが、寒風にさらされている線香花火でも見ているような侘しさばかりが募った。

カープを応援しはじめて、はや40年あまり。
1975年の初優勝時、あるいは日本一となった1979年のときとくらべても今年のカープは遜色ないチームだろう。
というよりも歴代最強チームといって、否定するファンはほとんどいないのではないか。

そのカープに、最強のチームに、こんな戦い方をされては困るのよ。
安部選手じゃないが、もっと覇気を持って、そして自信を持って戦ってほしいんですよ。

                  ❇

まあ泣いても、こぼしても、これで2勝2敗の五分。
両チームともきれいにホームの試合で白星を並べての痛み分け。
きょうからまたあらたに仕切り直しをすることになったわけだ。(てことで「4勝1敗でカープが制覇」の予想はあえなくはずれてしまいました)

それにしてもお互いにホームではファンの圧倒的な声援を後ろ盾に、のびのびと力を発揮するものの、ビジター球場では借りて来たネコのようにおとなしく、プレイにも精彩を欠くようにみえる。

ホームは勝ち、ビジターは負け。
まるでそれがお約束事にでもなっているかのような星の割り振りだ。

たしかにズムスタ、札幌ドームのスタンドの雰囲気を見ていれば、そうなってしまうのもわからないではない。
ズムスタでいえば、スタンド全体がパフォーマンスシートになってしまったかのような狂躁状態で応援されるのだから、ビジターチームが萎えてしまうのも仕方ないのかもしれない。

とはいえ、あらかじめ勝ち負けの予想がついてしまうようでは、応援するほうは精がでませんて。

いったいぜんたい、これまでもこんなだったっけ?
ということで、カープがこれまで戦った日本シリーズはどうだったのか、ちょっと調べてみた。

それが下記の一覧だ。
勝ち試合は◯、負けは●。△は引き分け。(赤で記したのは、シリーズを制した年)
 □1975年 対阪急ブレーブス

  広島市民球場  ●△●  2敗1分
  西宮球場  △●   ● 2敗1分

 1979年 対近鉄バファローズ

  広島市民球場  ◯◯◯   3勝0敗
  大阪球場  ●●   ●◯ 1勝3敗

 1980年 対近鉄バファローズ

  広島市民球場●●   ◯◯ 2勝2敗
  大阪球場    ◯◯●   2勝1敗

 1984年 対阪急ブレーブス

  広島市民球場◯●   ●◯ 2勝2敗
  西宮球場    ◯◯●   2勝1敗

 □1986年 対西武ライオンズ

  広島市民球場△◯   ●●● 1勝3敗1分
  西武球場    ◯◯●    2勝1敗

 □1991年 対西武ライオンズ

  広島市民球場  ●◯◯   2勝1敗
  西武球場  ●◯   ●● 1勝3敗

この星取り表をホームとビジターとでまとめてめてみると下記のようになった。

  広島市民球場 10勝10敗2分
  ビジター球場  8勝11敗1分

なんとホームでも勝率は5割だった。
短期決戦で、サンプルも多くないからそのまま確率うんぬんをいうことはできないが、こと日本シリーズに関していえばホームもビジターも、勝敗はそれほど偏った数字にはなっていない。

あいまいな記憶ではあるが、かつてのスタンドでの応援ぶりはどことなく牧歌的だった。
派手でにぎやかな応援もなくはなかったが、それは一部のことでスタジアム全体が一緒になって同じ歌を歌い、同じ動きをし、同じ声援で応援するようなことはなかった。

家族でゆっくり弁当を食べたり、仲間で語らったり、球音を楽しみながらときおり声援を送ったりするような観戦ができるスペースは確保されていた。

いま風にいえば、スタジアム全体を支配している同調圧力のような威圧感はなかったし、敵からすれば暴力的な印象はなかっただろう。
ときおり、汚いヤジが飛んでくるくらいがプレッシャーだったにちがいない。

昔からホームに「地の利」はあったにしても、それが勝敗を大きく作用する決定的な要因になっていたわけではなかった。

ところがこのシリーズに関していえば、ここ最近の応援スタイルが大きく影を落としているようにみえる。
まるで「内弁慶シリーズ」とでも言いたくなるほどホームとビジターとで明暗がわかれている。

お互いに地元ではファンの声援を力に優位にゲームを進めて勝ちをたぐりよせるが、敵地では圧倒的なアウェイ感に圧し潰されて自力を発揮できずに敗退している。

ホーム球場の応援がどんどんエスカレートしてきて、声援やメガホンなどのボリュームも、ウェーブやスクワットといったアクションも、かつてとは比べ物にならないほど圧倒的となってしまったことによって、こんな現象があらわれているのだろう。

相手チームのピッチャーや野手にすれば、それはもう応援のレベルをはるかに越えて、「プレイを妨害するノイズや騒動となっている」といってはいい過ぎだろうか。
それはまた、ときにはホームの選手たちのプレイの邪魔にさえなっているのではないだろうか。

プロ野球のスタンドで行われているいまの応援スタイルを全否定するつもりはない。
カープの選手や監督は口をそろえて「応援が力になっています」といっている。

それは事実だろう。
応援が選手たちの力になっていることは疑いようがないし、それで勝った試合だっていくつかはあるだろう。

また応援しているファンには、それが愉しみになっていることもわかる。
しかし、そこにはおのずと節度というものがあってしかるべきだろう。

攻撃のチャンス、守備のピンチ。
ゲームのなかで流れがあり、折々にポイントがある。
それに合わせてスマートにやってこその応援ではないのだろうか。

きのうまでのシリーズの推移を反芻しながら、そんなことを思っていた。






  





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