2016年10月15日土曜日

名シリーズへの期待

ファイナルステージ22イニング目にして初めて得点したベイスターズが、つぎの回にも負傷の梶谷のタイムリーで1点加点して3得点。先発の井納投手の好投を中継ぎ抑えが引き継いで、そのまま完封勝利してカープに一矢を報いた。

  横浜 000210000 3
  広島 000000000 0  
  勝 井納1勝   負 黒田1敗   
  本塁打 エリアン1号 

前の試合まで、スタンドの「真っ赤激」に圧倒されてもはや戦意喪失かと思っていたが、陰極まって陽になるのたとえどおり、開き直ったベイスターズが好守好打を連発しての快勝だった。 

その発奮に火を点けたのは、いうまでもなく4回表に飛び出したエリアンのツーランホームランだが、前述した梶谷選手のタイムリーヒットとライトへの飛球を倒れこみながら好捕したプレイ、そしてフェンスに激突しながらフライを捕球した石川選手のガッツプレイだった。 

つぎつぎに飛び出すベイスターズのガッツプレイを見ながら、ある将棋の棋戦を思い出していた。 

それはつい先ごろ行われた叡王戦の羽生善治三冠と山﨑隆之八段との対局。

序盤に山﨑八段が巧妙な差回しを見せて優勢に差回していた。
ところが羽生三冠のマジックが出て、山﨑陣の守りの金を狙った桂打ち一手で形勢をひっくり返してしまった。 

そこからは羽生が一気に優勢から勝勢へと持って行って、あとは山﨑八段がいつ投了するかという局面になった。 
しかしそこから山﨑八段が驚異的な粘りを見せた。
秒読みになってからも窮地を脱しながら数十手指し継いだのだった。

はじめは往生際が悪く「ミットもない」感もあった。 それがいつからか手に汗を握るようになり、奇手好手の連発に心の中でどよめきながら見つめている自分に気づいた。 

そんな感覚が一手ごとに強くなって行って、最後には驚異的な粘りに感動し目頭が熱くなっていた。
羽生マジックを何度も目撃して「驚き」は再々経験しているが、将棋を観戦しながら初めて目頭が熱くなるのを覚えた。 

残念ながら粘りも及ばず山﨑八段は羽生に敗れた。
粘ってはいたが、どうしても最後まで勝ちは見えなかった。
羽生が勝勢のまま差し切った1局ではあった。 

それでも、あの1局は歴史に残る名棋譜となった。
勝ち負けの結果からくる喜びと落胆に至るまでのプロセスで、われわれは奇跡のような感動と出会うこともあるのだ。 

先の将棋に例えれば、ベイスターズはカープにかけられた初めての王手をしのいだにすぎない。
つぎの王手で詰まされる可能性はなくもない。 

しかし、あの将棋のように土壇場までしのぎにしのいで見せることだってできるかもしれない。
もちろん大逆転の可能性だって、なくはないのだ。 

現時点で大逆転が現実となる可能性は限りなく小さい。
星勘定とチームの力からいえば、かなり難しいことは誰もが認めることだろう。 

しかし、勝敗が決するまでの戦いぶりには期待してもいいはずだ ベイスターズファンはもちろんそれを望んでいるだろうし、カープファンだって相手を讃えながらの勝利をかみしめるに越したことはない。 今夜もまたベイスターズが素晴らしい野球を見せてくれることを期待したい。

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