5月3日の試合
中日 110010001-4
広島 00022210X-7
広島 00022210X-7
勝 中村祐1勝 負 吉見4敗
本塁打 京田1号 ゲレーロ3号
新井5号 会沢1号
5番に新井が入り、6番には好調安部があがった新オーダー。
それがさっそく機能した。
この試合で4番の鈴木は無安打だったが、ふたりがあがったことで打線がつながった。
4回の同点となる得点は、丸が安打したあと鈴木が倒れてから新井が放った2ランホームランによるもの。
インハイのシュートを「待ってました」とばかりに、きれいにからだを回転させてレフトスタンドに押し込んだ読みがちの一発だった。
さらに7回の追加点は新井、安部の連打でつくったチャンスにエルドレッドがタイムリーを放ってのもので、ふたりを前にあげたことが功を奏した。
松山の故障離脱もあっての“ケガの巧妙”ともいえそうだが、指揮官の起用がまたはまった。
緒方監督の打つ手打つ手が、好手となっている印象は去年からつづいている。
もちろん、どのようなバリエーションでも機能するチーム力があるからのことではあるのだろうが。
*
“指揮官の好打”といえば、この試合で中村祐を先発させたこともそうだ。
恥ずかしながら、こちらの頭の中の一軍リストには入っていなかった投手。
ここまで二軍でも防御率4点台らしく、しかも二軍登板すら10あまりの経験しかなかったという。
それをいきなりのプロ先発起用なのだから、正直いって驚いた。
以前、由宇にいったときに感じたことだが、二軍の環境がとてもいいのだ。
ひとつのプレイごとに、また練習の合間に、試合の後に、コーチ陣が選手たちとマメにコミュニケーションをとっている。
選手の才能、状況をよく理解していて、それを生きた情報として上に伝えているはずだ。
そして、その評価を信じて指揮官が起用しているということなのだろう。
二軍で鍛えられている選手には、“旬”というものがある。
伸びしろが実力にかわって、ぐんぐん成長して上昇曲線がピークになる、まさにそのときに一軍にあげて起用しないと、なかなか選手も結果を出せない。
機は熟しているのに、そのまま腐ってしまうことにもなりかねない。
いいタイミングで起用すれば、その勢いのまま結果を出せる。
それが実績となって、選手として一本立ちしていく…。
いま一軍でスタメンを張っている選手たちは、そのようにしていまの地位をつかんでいる。
この試合の中村祐投手は、まさにそんな好例のひとりそうだ。
*
その意味では、いまカープは一、二軍の連携がうまくいっているのだろう。
佐々岡二軍投手コーチ:「監督、中村祐がいいっすよ。先発いけるんじゃないですか」
緒方監督:「そうか。ササがそういうんなら間違いないだろう」
佐々岡:「ぜったい結果だしますよ、あいつのカーブは通用しますから」
緒方監督:「ちょうどローテの谷間だ、使ってみよう」
こんな感じかな。
先に由宇を訪れた日には、ちょうどオスカルが一軍行きを告げられていた。
それを本人に直接声をかけて伝え、アドバイスを与える佐々岡コーチの様子を見ていた時、こんなベンチの信頼関係が伝わってきたのだった。
それにしても、プロ初登板初先発初勝利の中村祐投手には恐れ入った。
マウンドでの表情を見たとき、「これはもしかしてやるかも…」とは感じたが、その予感を現実のものにしてしまうとは。
とにかく面構えがいい。目力もある。
あと、オーラね。
五月の明るい陽光のせいもあったのか、彼のまわりだけひときわ輝いてみえた。
「持っている」ってやつだ。
5回を投げて降板した時点では、2対3と負けていた。
そのビハインドの1点も、同点にしてもらった直後にドラゴンズ京田にプロ初のホームラン献上してのものだ。
やってはいけない失点…。
それでも、その裏に野手が逆転してくれての勝利。
元祖斎藤佑樹と同じ「ユウちゃん」。やはり「持ってる」というしかない。
また、こんな僥倖が似合う好青年ぶりだ。
彼の決め球はカーブのようだが、かつて高卒新人ながら「縦に割れるカーブ」と高速ストレートで破竹の開幕15連勝をした巨人の堀内恒夫にくらべるとスピードもキレもかなり見劣りする。
しかし、彼は同じ“カーブ投手”でも、まったくちがったスタイルで結果を残せそうだ。
それがどんなものか具体的なイメージはまだ湧かないが、そんなことを期待させるなにかを彼は「持っている」ように思える。
*
それにしてもドラゴンズの体たらくには、目を覆いたくなる。
前の試合でビシエドが痛恨のエラーをしたばかりだが、この試合でも三塁のゲレーロのミスからカープは逆転した。
5回裏。先頭バッターの会沢のゴロをファンブルして後逸。これを二塁打にしてしまったばかりか、つづく代打天谷の投前バントをすばやく処理した吉見が三塁タッチアウトを狙って送球したボールに触ることもできずにまた後逸、ミスにミスを重ねてミスミス会沢の帰塁をゆるしてしまった。
ありえないミス。
こんな信じられないことが起こってしまうところにドラゴズ低迷の因があるのだろうし、こんなことをしていては勝てる試合も勝てない。
もし中村祐がいまのドラゴンズをバックに投げていれば、もちろんこの日のような投球はかなわなかっただろうし、初勝利はお預けになっていたことだろう。
それを考えると、同じ2013年入団の高卒投手ながら前試合で負け投手となったドラゴンズの鈴木投手が、すこし不憫に思えてくる。
健闘むなしく、味方に足を引っ張られて負け投手となった鈴木投手。
片やバックの援護に支えられ、チームの勢いにノって、ノセられてプロ初登板初先発で勝利をものにしてしまった中村祐投手。
しかも鈴木投手はドラフト1位指名。中村祐投手は5位指名での入団だ。
もしふたりの立場が逆だったら、現時点での投手生命はまったくちがったものになったことだろう。
その意味でも中村祐投手は「持っている」ということだろうか。
*
この日の私的MVPは追加点となる2ランホームランほかの活躍をした会沢翼捕手。“棚ぼた勝利”だった中村祐投手は、つぎの機会にお預けだ。
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