2017年4月17日月曜日

小さなステップが生んだ大きな成果

4月16日の試合
広島 100000000-1
阪神 000001X-2

勝 マテオ2勝

負 九里2勝1敗


「3年◯◯をつづけたら本物だ。」

球界ではよく語られることだ。

「野球にタラレバはない」と譲らない解説者や関係者も、このタラだけは意外に大好物らしい。

3年スタメンをつづけたら本物さ。
3年3割をつづけたら、ようやく一流バッターだよ。
3年二ケタ勝利をあげたら、一流投手といってもいい。

これにならえば、3試合連続して好投した九里は“プチ本物投手”になったといってもいいのだろう。

3連勝はならなかったが、3試合連続好投したことで彼の前2試合の活躍がフロックではなかったことが証明されたということでもある。

残念ながらこの試合では負け投手になったが8回1/3を投げて失点2、しかも138球の熱投はクオリティースタートを凌駕して「ハイクオリティスタート」ものの投球だった。

過去、シーズン2勝が最高だった投手が、すでにこの時点でその記録に肩を並べている。
ここまで安定して投げることができ、また結果もついてくるようになったのには、さまざまな理由があるはずだ。

巷間伝えられるところによれば、黒田博樹とジョンソン、両投手から受けた“薫陶”が影響しているという。

黒田からは、完璧を求めすぎる投球を指摘された。

これまでの九里の立場からすれば、もらったチャンスでは常に結果を出さなければならない状況に置かれていたわけで、それもいたし方のないところだったのだろうが、その焦りが投球を窮屈なものにしていた。

「たまたま完璧に抑えて完封できても、ほかの試合でノックアウトされつづける投手と、いつも6回を3点で抑える(クオリティスタート)投手と、どちらが使いやすいかと思うか?」

こう問われて、九里の目からウロコが落ちた。

多少点は取られても、ピッチングをまとめられればいい、そう思えるようになってからは力まずに投げられるようになって、それが好結果につながったのだという。

ジョンソンからは、フォームのヒントをもらった。

それまでモーションに入る前にプレートから後ろに引いていた足を、一塁側に少しずらす程度にした。
そうすることで上体のブレがなくなって、スムーズに安定したフォームで投げられるようになったというのだ。

ほかにも要因はあるのかもしれないが、なによりも自分のピッチングを変えるために貪欲にフォームの改造にチャレンジした、その意欲が好結果を呼び込んだことだけは確かなようだ。

                     *

ここまで3試合の九里投手の投球内容をふりかえってみよう。

第1試合 4月2日 対阪神 6回    被安打6 与四死球4 奪三振8 失点1 自責点1 球数115
第2試合 4月9日 対東京 7回    被安打4 与四死球3 奪三振6 失点2 自責点2 球数121
第3試合 4月16日 対阪神 7回2/3 被安打4 与四死球5 奪三振10 失点2 自責点2 球数138

これを見て驚き納得するのは、試合のたびに投球数が着実に伸びていることだ。

それは安定した内容で長いイニングを投げていること。
その中で着実にマウンド体力が付いてきていることの証左といえるだろう。

いずれ完投勝利、完封勝利を記録する日も、そう遠いことではなさそうだ。

                   *

ゲームはその九里とカープには相性がいいベテラン能見投手の今季2度目の投げ合いになった。
そして両投手の好投で、ひさしぶりにしまったいいゲームになった。

結果はカープが1対2と惜敗したが、1回表にもぎとれる点を取れなかったカープと、3回に棚ぼた的に点をもらえたタイガースとの運、不運の綾が勝負をわけた。

カープは初回、タイガース先発の能見から田中が安打すると、菊池が積極的に打ちにいって連打し、ノーアウト一、二塁と大きなチャンスをものにした。

ここで丸はショートゴロに倒れたが、ランナーはそれぞれ進塁して二、三塁。
つづく新井は、まだアップアップだった能見から四球を選んで満塁とチャンスを拡大した。

ここで5番の鈴木は、能見が2球目に投じたアウトローへのチェンジアップをとらえて、「スタンドイン!」かと思わせる大飛球をレフトに打ち上げた。

これが犠飛となって、カープは1点先制。

この場面で犠飛を簡単に打てる勝負強さはさすがだといえたが、打った瞬間に「行った!」と思ったあの打球がスタンドに届かなかったのには、いささかの不満が残った。

本人は「バットの先っぽだったので、犠飛になってよかった」とコメントしていたが、外野から見ていたかぎり「好調時の鈴木だったらあれはきれいにとらえてスタンドまで運んだのではないか」との思いはぬぐえない。

つづくエルドレッドは勝負をさけられての四球で、ふたたび満塁となったが、小窪がショートフライに倒れて3アウト。
カープのこの回の得点は結局、鈴木の犠飛による1点にとどまった。

もしあの鈴木の犠飛が満塁ホームランとなっていれば、もちろんゲームの展開も結果もまったくちがうものになっていたはずだ。

あのときの攻撃に、勝負の綾があったように思う。

そして、3回裏のタイガースの攻撃についていえば‥‥

この回の先頭バッターはピッチャーの能見だったが、九里はこの能見に四球を与えてしまう。
これが誤算のはじまりだった。

九里はつづく糸原にも四球を与えてノーアウト一、二塁。
これで動揺したのか、つづく高山のピッチャー返しの打球を捕りそこねて内野安打にしてしまう。

すると動揺が連鎖して、つづく糸井のファーストゴロを新井がファンブル。本塁封殺に間に合わずに得点をゆるしてしまった。

この1点が決勝点になって負けたわけではなかったが、やらずもがなのこの1点がなければ、カープに負けるという目はなかっただろう。

九里の好投につきる試合ではあったものの、この回のちょっとしたつまずきが惜しまれてならない。

これでカープは阪神3連戦に1勝2敗。今季初のカード負け越しとなった。

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