2017年4月20日木曜日

“ショートゴロ・マジック”が警告したファンのマナー

4月19日の試合
横浜 000201001-3
広島 000000-0

勝 今永1勝1敗

負 床田1勝1敗


ベイスターズ今永投手の前に1安打と沈黙したカープは、プロ初の完封勝利を献呈してしまった。

9イニングをビシッとしめられた感じはなく、いいんだから悪いんだかわからない、とりとめのない投球の前にはぐらかされ、やり込められたような印象で、「強打のチームがやられる」典型的な試合だった。

さぞや選手も首脳陣も、フラストレーションが溜まったことだろう。

ボタンのかけちがいは、1回裏のカープの攻撃からはじまった。

1アウト一、二塁で迎えた4番新井の打席。
ここで1本ヒットが出ていれば、試合の流れはカープに傾いていたはずだったが、結果はショートゴロ併殺となってカープは先制のチャンスを逸した。

この打球がケチのツケはじめで、その後もショートへのゴロがカープの攻撃に水を差すことになった。

まずは6回裏。
代打の下水流が投前のゴロに倒れた後、1番田中の打席だった。

打球はショート倉本へのゴロとなったが、俊足の田中の足が一瞬早くベースを踏んだ。
ところが判定はアウト。

カープの攻撃の小さな芽が、これで摘まれてしまった。

つづく7回裏のカープの攻撃。
先頭バッター丸のレフトへのフライを筒香がフェンスにぶつかりながらも好捕して1アウトになったが、4番新井と5番の鈴木がたてつづけに四球を選んで、カープに大きなチャンスがめぐってきた。

ここでエルドレッドは三振に倒れたが、つづく小窪の打球はバットの先に当たったボテボテのショートゴロ。
しかしこれが幸いして内野安打になった、はずだった。

ところがジャッジは、またしてもアウト。
2アウト満塁の局面が、あっけなくもチェンジ。

ここは大きなチャンスの芽になったはずが、これも根こそぎにされてしまった。

これには緒方監督も激高して当然。
6回のときと同じくベンチを飛び出すと、一塁塁審に激しく詰め寄って猛抗議。
しかし判定がくつがえるはずもなく、それどころか「暴言を吐いた」ためプロ初の退場処分となっしまった。

そして結果は前述のとおり。
カープは今季最小の1安打で、初の完封負けだ。

                     ✲

この試合、ショートへのゴロが、ことごとくカープには鬼門となってしまった。

6回の田中のゴロは三遊間を破りそうな当たりだったが、ショートの倉本が深く守っていて好捕。
ポジショニングのファインプレーだった。

ところがショートの深い位置からの送球がワンバウンド。しかもそれがライト側にそれたのを名手ロペスがこれも好捕。
ワン、ツーとファインプレイがつづいて一塁の塁審が、つい「アウト!」を宣告してしまった。

これはわからなくもない。
ショートの深い位置で倉本が捕球したとき、すでに塁審のジャッジは“アウトモード”に入っていた。
判定も『微妙』の範疇だった。

ところが7回のケースは、微妙でもなんでもなく、あきらかにセーフだった。
果敢にヘッドスライディングした小窪がベースを抱いた後、一塁のロペスが捕球していたのだから。

反対のケースで小窪の闘志に、つい「セーフ!」ならわからなくもないが、これにはつい「ひどい!」と叫んでしまった。
悪意すら覚えていた。

とはいえ塁審も故意にやったわけではないだろう。
技術的にショートからの送球を確認するポジション取りか、それとも目の配りに難があるのかもしれない。

聞くところによると、塁審の判定は塁上のタッチは目視し、捕球のタイミングはキャッチ音で判断するようになっているという。

もしそうだとすれば、あの狂躁と歓声のるつぼと化したズムスタでは捕球のタイミングははかれない。

もしかすると、あのたてつづけの一塁の誤審はズムスタのファンが招いた“オウンゴール”だった可能性もなきにしもあらずなのだ。

今回のお粗末なジャッジのどちらもが、そのことに起因しているのかどうかはわからない。
しかし本来野球のあるべき状況とはかけ離れた異常な事態がいまズムスタで常態化していることを、このミスジャッジは警告したのかもしれない。

                     ❊

思い出すのは、公式戦がはじのまる前のオープン戦のことだ。

明石での試合だっが、左中間に飛んだ打球を追った丸と堂林が交錯しそうになったとき聞こえた丸選手の「オーライ!」というかけ声。

あの叫びが唐突に耳に入ったときの驚きと感動。

「ああ、おれは野球を観てるんだ!」

しみじみと、そう実感したときの至福の時間をあらためて思い出した。

たとえば、「カキーン!」という打球音を残してセンター前に抜けようかという強烈な打球に静まり返ったグラウンド。
そこに突然菊池が飛び出してきて見事にキャッチするやいなや、すかさずあの強肩で送球したボールが「パーン!」という捕球音を轟かせて新井のミットにおさまって「アウト!」になる。

そのときはじめて、彼の超ファインプレーをわれわれファンは十全に目撃したことになるのではないだろうか。

                     ✲

カープファンがさまざまな創意工夫によって、いまの演出にまで応援のスタイルを高めたことには敬意を表する。
しかし、そろそろ超満員のスタンドでの日々の喧噪が、そろそろ限界にきているように思う。
野球が台無しにされかねない、そんな事態にまできてしまっているように映る。

そろそろ「スタイル」から「マナー」へと目を向けてもいいころなのではないか。

ズムスタの素晴らしさは、すでに衆知されている。
一糸乱れぬファンの応援ぶりも、他球団のファンには驚きをもって迎えられてもいる。

ならばそろそろ、他球団の応援にさきがけてマナーという観点を取り入れてみてもいいのではないか。

選手へ応援歌やエールはバッターボックスに入るまでとか、投球がミットにおさまるまでは鳴りもの歓声は自制するとか、野球というスポーツが本来持っている攻守のリズムや試合の流れを踏まえたルーツづくりを検討してみてもいいのではないだろうか。

それがなったとき、はじめてカープファンは他球団のファンから本当にリスペクトされる存在になるのではないか。





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